1月17日の天声人語を載せます。
避難所で泣きながら食べたおにぎり、マンション9階に運ぶには重すぎた給水タンク。
朗読ボランティア団体「震災を読みつなぐ会KOBE]の書庫には阪神・淡路大震災の体験手記が並ぶ。
「復興が進めば進むほど、震災をくぐり抜けた私たちでさえ記憶が薄れていきます」と代表の下村美幸さん(68)
いまボランティアは23人。若い世代に伝えたいと小中学校などで朗読を続けてきた。これまでに延べ6万人が耳を傾けた。
父が亡き息子に語りかける「英人よ」は、震災10年目に書かれた。大学院生だった息子を失ってから年賀状を書けず、初詣にも行けない。「3288、3289、3290、3291」。亡くなってから経過した日の数ばかり数えてしまう。
「キッタン、じゃまたな」親友に宛てた男子中学生の一遍。「俺はキッタンの御葬式に行けてうれしかった(略)ほんまにきれいな顔やったで」。
生死の道は分かれたが、友情は変わらない。「心の中だけじゃなくて体全体にキッタンいきてるからな」
「手記探しに困ったことは一度もない。あれだけの大災害。記録しよう、伝えようと思わない人はいませんから」と下村さん。
当初は児童生徒に読み聞かせていたが、途中から方針を改めた。「子供たちに朗読してもらってこそ手記は生きながらえます」
震災から25年。被災地の外から見れば四半世紀という時の速さに驚くばかりだが、お借りした手記を読み進めると、あの日、あの時にたちまち引き戻される。(おわり)
このようなことが、明日のこの地域に起こっても不思議ではないといわれています。
起こっても命を守れるよう 備えましょう、一人一人が。